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旧岩崎邸庭園見学会(平成16年11月27日) 東京農業大学 造園科学科3年 佐々木三貴子 旧岩崎邸の現在の正門を入ると、入園受付所まではゆるやかな砂利道のスロープを登って行く。受付所まで来ると、目の前に日本近代建築の父といわれるジョサイヤ・コンドル設計の立派な洋館が現れる。洋館の外観は細かいところまで装飾がほどこされていてとても美しく、一目見て惹き付けられるものがあった。 ガイドをしてくださった服部先生のお話の中で、まず驚いたことは、この旧岩崎邸は台地の上に立地しているため、本来は不忍池や浅草の街並み、東南の方には房総半島や海を、西には富士山を望むことができるほど眺望がすばらしかったということである。なるほど、確かに入口からゆるやかに登ってきたと、教えていただいて初めてここが台地の上だと気づくほど、現在は周囲を洋館より高い建物に囲まれており、遠くの景色を望むことはできない。本来はこの場所にあるということ自体が、贅沢なことだったのだろうと思った。 洋館の正面から裏にまわり、庭園に入っていくと、外周には樹木が生い茂るのびやかな芝庭が洋館の前に広がっており、初めの印象は洋館に合わせた西洋風の庭園であるなと思ったのだが、芝庭の脇に目をやると、2〜3mはあると思われる大きな雪見灯篭があり、和洋折衷の空間になっていた。はじめは、この広い芝庭と灯篭の配置が不思議に思えたのだが、この庭園が明治初期頃までは和風庭園であり、当時はこの灯篭の場所まで池が広がっていたということを聞いて納得することができた。この庭の変遷と長い歴史があってこそありえる空間ではないかと思った。そして、この灯篭の役割は、この庭園を訪れた人々に現在の芝庭を眺めながら、かつてあった庭園を想像させることで、この庭の変遷と長い歴史を伝え、旧岩崎邸庭園をこれからも保存していく重要性を教えてくれるのではないだろうかと思った。 その後、本当に贅を尽くした豪華な装飾ばかりの邸宅内部の見学も終え、外に出ると、辺りはもう暗くなっており、最後に洋館1階ベランダで行われた胡弓の演奏会を聴くことができた。ライトアップされた洋館をバックに行われる演奏はとても素敵で、視覚も聴覚も満たされていく気分であった。この旧岩崎邸庭園のように人がもう暮らすことがなくなり、いわば死んでしまった空間が、この演奏会のように、見学という目的だけでない新たな空間の利用をしていくことで、これからも生き続けて行くことができるのではないかと思った。 |