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景観を考える夕べ 東京の「眺め」へのアプローチ ―西村幸夫氏・基調講演要旨― 眺望景観とは、日本でも古くから意識されてきたものです。富士山を見通すことの出来る「富士見通り」や、城下町でのお城の見える道路パターンは、実際に眺望を考慮して道を作ったためです。また、高台などの地形を利用して眺望を得る工夫もなされています。上野の不忍池を見下ろす清水観音堂は、その良い例でしょう。しかし今では不忍池の背景に、ホテルや大学の高層ビルが建ってしまっている。現在の斜線制限は、空地に面していれば高い建物が建てられるという規制になっていますが、景観上建てて良い、悪いの線引きを決めておくべきでしょう。眺望景観とは計画的な配慮や、地形の中の立地、そしてランドマークのようなシンボリズムの操作により得られるものです。 ―パネルディスカッション― 中島直人氏 何気ないまちなかにも眺望景観はたくさん潜んでいます。「尾の道に美あり」の言葉のように、目白通りなどの尾根から下る坂道や階段では、現在でも市街地への展望が得られます。また早稲田の大隈講堂は地域のランドマークとなっている。こういった身近な場所の眺望が見直されていくと良いのではと思います。
関口信行氏 東京の風景を時代を追って見ていくと、明治期、地形により形作られていた地平線は、都市の高層化により視点場が失われ、スカイラインも無秩序なものとなってしまいました。建物の高さを高くする地域、低くする地域の線引きを設け、東京の街全体の顔としてのスカイラインをデザインするべきではないでしょうか。 青木いづみ氏 日本庭園には、庭の中にある風景世界を表現する縮景や、外の風景を取り入れる借景という手法が用いられます。しかし今では、小石川後楽園の背景には東京ドームが迫り、清澄庭園の周囲にはビルが建ち、と景観が損なわれてしまっている。周辺環境に配慮した計画のもとで、ランドスケープを守ることが重要だと思います。
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